究極のフライロッドとはどんなものか?
道具は突き詰め極めるほど用途に合わせて細分化し個別的な物になって行きます。生物が環境に適応しながら多様化し拡散したように、フライロッドも釣場環境や体格に合わせて個別的であるべきで、それは片方の側面から見た究極の在り方でしょう。他方、どんなフライロッドにも機能性から見た共通要素が有ります。いかなる用途の刃物も物を切るという点においては共通であるように、フライロッドには長さが変化するフライラインを制御するという宿命があります。OCTAGON はこの個別性と汎用性の追求を全く新しいロッド製作技術によって両立させました。 ソリッドカーボンの潜在能力を最大に引き出すために独自開発されたロッドシャフト切削マシン "バーチカルクローラー"は長尺ソリッドカーボンの多面切削を実現し、複雑な多段テーパーや逆テーパーなどどんな設計であっても削り出すことを可能にしました。また数値制御しながら一本ずつ削り出す加工法はあらゆる個別の要求に正確に対応することが出来ます。 ソリッドカーボン自体は決して最新の素材ではありません。しかしまったく新しい加工技術との融合によってかつて無いフライロッドの可能性の扉を開きました。探究と進歩というベクトルの中にこそフライフィッシングの心髄はあります。一度使えば二度と過去には戻れない強い重力を発するフライロッド、それがOCTAGONです。
作者挨拶
竿を作ることは魚を捕獲するという結果に至る過程の一つであり手段です。しかしいつしか手段は目的になり、人生の大半を浸食していました。今更言うまでもなくフライフィッシングは漁獲という目的周辺のあらゆる行程を喜びにする実に煩わしくもポジティブな行いです。私にとってはこのフライフィッシング的思考や行動があらゆる美意識や判断の軸になっています。竿作りはその到達点です。釣り人にとって竿は己自身の延長です。それは単なる機能的な道具である以上に魂の入れ物でもあります。世にあふれる工業規格品では自分の魂の入れ物としてちょっと嫌だな、と思ったことが竿を作るようになったきっかけです。私は SOLID において、フライロッドという物品を作り販売するだけでは無く、釣り人自身が自分の竿を造る機会と場を創りたいと考えています。 今や絶滅危惧状態の日本のフライフィッシングに少しでもプラスの刺激になればと願いを込めて。 丸山 聰